教会の中で、私はポカ~ンと立ち尽くしていた。だって、だって!キッズ達が「こんなの持っててすみませんでした~」って感じで差し出したヒップホップのCDが、大人達の手によってバットで叩き割られてるんだもん!!それはまるで、日本の中学校かなんかで、先生達の呼びかけによって男子生徒がしぶしぶベッドの下に隠してたエロ本を差し出して、それを燃やすところを皆で円になって眺めているような、とてつもなく異様な光景…。CDが粉々になったところで、バットを持ったまま大人が言った。
「HIPHOPが悪いわけじゃないんだ!ただ、一部のHIPHOPは青少年に悪影響を与えている。悪い言葉(FUCKやSHIT等…)が入ったCDは買っちゃ駄目だ。もし持っている子がいたら来週持って来る様に!」
この集会に私を連れてきた張本人、キーシャが私にウィンクした。
「リリー、いっぱい持ってるでしょ?来週持っておいでよ☆」
私は驚いて思わず“FUCK!(マジかよ!)”と言いそうになったけど、とりあえず「メ…、メイビー(まぁね…)」と呟いた。そして、戸惑う私をよそに、集会はクライマックスへ…。
だけど!!CDを叩き割るなんて、ちょっとやり過ぎ…。
「さぁ!ここからお待ちかねのショーケース!クリスチャンRAPのライブが始まるぞ~!」
バットを置いた大人が突然HIPHOP風のMCを入れた。(苦笑)そしてB-BOYスタイルのファッションでキメたキッズ数人がステージの上へ。ドンドン、という重たいビート音が教会を包み込み、キッズ達のRAPが始まった。内容はアルコールやドラッグがどのように若者を滅ぼしてゆくか、というもの。
CDが叩き割られていた時点で一刻も早くこの場から逃げ出したかった私の予想を反して、RAPは凄くかっこよかった。ショーケースが終わると、“集会のお土産”としてキッズ達のRAPを録音したCDが配られた。
“なるほど。悪影響なHIPHOPのCDを、ここでクリーンなクリスチャンRAPのCDに入れ替えているのかぁ。確かに社会貢献なのかもなぁ”なんて私はちょっと関心したりもした。だけど!!CDを叩き割るなんて、ちょっとやり過ぎ…。
「ねぇキーシャ。今日割られてたCDのアーティストも、確かに汚い言葉を使ってるし悪いこと言ってるかもしれないけど、彼らの胸にはブリンブリンな十字架が光ってるし、アワードを受賞した時には神様にメッセージを言ったりしているから、キーシャと同じクリスチャンなんじゃないの?」
帰り道、私はキーシャに素朴な疑問をぶつけてみた。
「クリスチャンにも色々あるのよ。でも彼らは私と同じではないわ。私はストイックな信者だから!ねぇリリー、来週も来るでしょう?実は私、留学生の貴方に期待してるのよ☆この活動を日本でも広めてくれないかなって!」
私は、またまた驚いてついつい“SHIT!(嘘でしょ?)”と言いそうになったけど、とりあえず“No,ThankYou”と丁重にお断りしておいた。
第7話へ続く・・・
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